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移民がもたらす日本脅威論・『暗黒大陸中国の真実』ラルフ・タウンゼント著(1933年)15

移民がもたらす日本脅威論


 私は卒業後2年間サンフランシスコにいたので、カリフォルニアの人間が中国人と日本人にどういう感情を持っているかがよくわかった。圧倒的に中国よりである。もっとはっきり言えば、圧倒的に反日であった。中国人が嫌いという人も大好きという人も少ない。大多数は無関心なのになぜか反日感情だけは盛んであった。親日家はゼロに近かった。第一の理由は、愛嬌がないことだろう。二番目は、太平洋での日本の動きに対する不安であろう。この不安をカリフォルニアの財界が盛んに煽っている。軍港と陸軍基地の増設を目論んでいるのである。そうなれば地域は活気づく。兵隊が金を落とす。地域経済は万々歳だ。しかし新聞には「造幣して金を落とさせろ」とは言えないから、「適切な防衛」と表現したのであった。事情を知らない者は不安に駆られ、寝る前に日本人が潜んでいないかベットの下を調べたりする。「日本軍特殊部隊メキシコに上陸」という見出しに、カリフォルニアのオレンジ農家は震え上がり、新聞が売れる。とかく新聞社は発行部数を気にする。


 確かに太平洋側の防衛は緊急課題である。しかし日本脅威論を煽り過ぎるのは百害あって一利なし。

 日本脅威論はどこに端を発したのだろうか。中国人の移民が50年前に停止になったのにもかかわらず、日本からの移民が今でも続いているところにあるかもしれない。

25年前、カリフォルニアが日本人に占領されてしまうのではないかと恐れた。そこで移民削減のため、全く根拠のないプロパガンダを始めたのである。今でも反日感情が残っているのはそのせいである。また我々は、本能的に人種差別をしているということを忘れてはならない。
すべてがそうだとは言わないが、やっている本人が気づかない。本能的に嫌いな民族を好きになれと言われてもなれるわけがない。また「ふりだけでもしろ」というのは偽善でしかない。中国人や日本人を見ると「虫唾が走る」と言う人もいる。誤解やら間違った情報で起こる場合があるが、本能的に嫌いな人には、いくら説明しても無駄なのだ。

(略)

 日本叩きのネタはないかと考え、偶然考えついたのが、中国人を持ち上げることであった。こう考えるのには根拠がある。逆を想定するとよくわかる。もし中国が強力で脅威だったらどうだろう。反日家は「間違っていた」と気づくだろう。

 全米の中国人観、日本人観は大なり小なり、カリフォルニア発である。両国の移民の歴史を見てみよう。中国人が大挙してアメリカに渡ってきた50年から75年前、西部はゴールドラッシュで、鉱山掘り、鉄道工事が盛んであった。当時の彼らの社会的地位はコヨーテ同然で、アメリカ人と争うはずがない。逆らおうものなら、インディアンやガラガラヘビ同様、根絶やしにされた。差がありすぎては争いなど起きるはずがない。

 日本人が移民としてわたってきたのはそれからしばらく後、アメリカの民主主義が大きく成長し、平等思想というものに触れた頃であった。ただし、反対も多かった。例えば、日本人の子女が同じ学校に入るのに反対した。偉そうなことを言っても、いざ実践となると「総論賛成。各論反対」というわけだ。コヨーテと思ってきた中国人とは争いは起こらなかったが、学校に入ろうとする日本人とは対立が始まった。家来扱いされても平気な中国人に対して、日本人はプライドが許さないからである。

 対日、対中関係を考察する時、25年前のカリフォルニア反日暴動などを振り返ることが重要である。移民の歴史を十分理解しないで、感情論で判断してきたのである。

(P252~253)

『暗黒大陸中国の真実』ラルフ・タウンゼント著(1933年)

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