トーマス・エジソンの日本に対する見解
世界的にも有名な米の発明家故エジソン氏は、1922年12月に米の著名なジャーナリストと対談を行ったが、その時彼は国際間の調和に満ちた関係を掻き乱している根本的な原因の幾つかを論じている。日本のことに言及して彼は注目に値する発言を行った。その要約は次の通りである。
「日本の問題点。日本が不穏な情勢に置かれている基本的な原因は政治的なものではなく経済的なものである。日本は拡張する余地が必要だ。日本は経済活動を行うためのもっと大きな分野が必要だが、その理由はただ単に日本の人口が増加しているためだけではなく、日本の事業能力が驚くべき速度で上昇しているためである。
日本は進歩的で進取の気性に富んだエネルギッシュな国である。日本国民をその小さな島に永久に閉じ込めておくことは出来ない。日本の人口は年間ほぼ百万人の割合で増加している。日本の自国の領土内で耕作のために可能な限り利用できる全ての土地はもはや開発され尽くしてしまった。日本がこれ以上開発できる土地はもう全く残っていない。日本の産業は発展し続けており、それは日本がもっともっと多くの原料を入手しなければならなっことを意味している。
日本がごく自然な流れで拡張していける国々にその活動範囲を広げていくことを、国際社会が一致団結して妨げるならば、日本を静止した平和な満足した状態のままにとどめておく方法を見出すのは難しいだろう。
私は必ずしも、西洋列強諸国がその移民策を改正して日本の移民にその門戸を開放すべきだ、などと言っているのではない。多分それは実行不可能であろう。だがしかし日本とすぐ目と鼻の先に広大な未開発の国々が横たわっているのである。例えば東シベリアの一部を日本に買い取らせてみてはどうか。満州もまた開発の余地がある。
この日本の自然な勢いでの拡張運動が生じた場合、西洋列強諸国とりわけ米、英、仏、この3つの最も裕福な国のとるべき態度は妨害と敵対であってはならず、逆に援助と心からの協力でなければならない。これらの国々は日本が大陸に足をかける度に『狼が出たぞ!』という人騒がせな叫び声をあげるべきではない。何故ならばそのような日本の進出は本質的に経済的な性質のものであって、軍事的な侵略を意味するものではないからだ。それが軍事的な色合いを帯びてくるのは、そのような日本の進出が塞がれてしまった時だけである。
列強諸国がなすべきことは明らかだ。日本の自然な進出を阻止し締めつける代わりに、日本を援助しなければならない。私が先ほど提案したように、もしも日本が東シベリアの一部を買い取りたいのであれば、西洋列強の最も裕福な国々は日本に資金(土地購入のみではなく、天然資源を開発するための目的も含めた)を融資するための金融連合体を組織するべきである。そのような日本を援助する政策は最終的に、日本を妨害する政策よりも遥かに安い出費で済むだろう。それどころか逆にそれは彼らの利益になりさえするかもしれない。
もしその反対に列強諸国が、大陸への日本の自然な拡張に反対する政策を一致団結してとり続けるならば、その結果は間違いなく爆発が起こるだろう、その爆発は日本国内の不穏な情勢に始まり、やがて日本が進出しようとしている大陸地域での凄まじい大変動となるだろう。
西洋諸国がこのような日本に反対する政策をとり続けていれば、やがては武力抗争にまで発展してしまうかも知れない。それは日本を援助するというもう一つの政策に必要な経費よりもはるかに大きい計り知れぬ程の犠牲を、日本に反対する列強諸国の側に生じさせることになるだろう」
この対談はその後的中した。中国の妨害政策は1931年の満州の爆発を引き起こした。この爆発が起こった時、列強は日本側のあの納得のいく条項に従って日本と交渉するよう中国に助言する代わりに、日本軍の撤退を主張し日本の阻止のみを図った。日本が解決しようと懸念していた大切な問題が何一つ話し合われていないにも拘らずである。これによって満州が切り離され、満州国という新国家が誕生した。
エジソン氏の発言は的を射たものであり、現在の中国での軍事的大変動において、列強諸国が採るべきであった賢明なやり方を指摘していた。もしも中国が列強諸国の一致団結した忠告に従って日本との協力政策を採ることを決心していたならば、中国はこれまで被った膨大な犠牲を免れることが出来たばかりではなく、日中双方にとって利益となるある種の協定を結んでいたことでだろう。さらにその上、そうなっていれば西洋列強諸国の利益にもなっていたことであろう。
P200-202
『シナ大陸の真相』K・カール・カワカミ著(1938年)
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