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昨晩、TBS「シリーズ激動の昭和 あの戦争は何だったのか 日米開戦と東条英機」を観た。
●番組HP
http://www.tbs.co.jp/anosensou2008/
第二部・ドラマ「日米開戦と東条英機」の主な出演者
東条英機(総理大臣・陸軍大臣)
ビートたけし
石井秋穂(陸軍省軍務局軍務課高級課員)
阿部 寛
吉原政一(東都新聞記者)
高橋克典
徳富蘇峰
西田敏行
第一部・「あの戦争は何だったのか」
視聴率13.6%
第二部・ドラマ「日米開戦と東条英機」
視聴率12.1%
TBSの割りには、捏造や偏りは少なかったと思うが、多少の感想とツッコミを述べる。
第1部(ドキュメンタリー)では、鳥越俊太郎、保阪正康、安住紳一郎が出演していた。
鳥越俊太郎は、「開戦直前まで首相をやっていた近衛文麿と開戦50日前に首相になった東條英機の2人には当然責任はあったと思いますね。」と言っていた。
鳥越らしいが、そこまで言うなら日本はどうすれば良かったのか言ってみろ。
第2部(ドラマ)になると、話を分かり易くする狙いもあったのだろうが、ツッコミ所が幾つかあった。
その中の2つ3つについて意見を述べる。
ドラマが始まって間もなく、東都新聞記者の吉原政一(高橋克典)が、徳富蘇峰(西田敏行)に対して、「しかし、満州は中国の一部です。いくら何でも武力で奪い取るというのは問題だったのではありませんか。結果的に日本は中国と泥沼の戦争を始めることになってしまった。」と非難するシーンがあった。
これは、おかしな台詞だ。
まず満州は支那の一部というのは事実ではないし、当時の日本人の知識層ならそのことを十分に認識していた。
●関連記事
満州と支那は別物
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当時の新聞記者が徳富蘇峰にそんな非難をするのは現実離れしている。
また、1931年から始まった満州事変の結果として、1937年から支那事変が始まったわけではない。
満州事変は、1933年に締結された「塘沽協定」において蒋介石の国民政府も満州国の成立を認めたことによって終結した。
満州事変と支那事変に因果関係は殆どない。
また、ドラマの後半では、同じく吉原政一(高橋克典)が、徳富蘇峰(西田敏行)に対して、「日本が支那や満州から撤退する勇気さえあれば、和平交渉は成立していたと思います。」と語るシーンがあった。
これも、フィクションドラマらしい不自然でおかしな台詞だ。
このドラマの中でも、日本がアメリカの言うことに従って満州や支那から撤退すれば4等国家に転落すると述べていた。
支那大陸(満州や支那)からの撤退が日本の4等国転落を意味したことは事実だ。
だから、徳富蘇峰などは、「アメリカとの戦争やむなし」を主張した。
当時の日本にとっては、米英蘭との開戦が最善策だった。
もしも、日本がアメリカの理不尽な要求に従って、満州や支那から撤退し4等国に転落したならば、日本はもっと悲惨な目に遭った。
まず、日本がアメリカの言いなりになって、支那や満州から撤退すると返答したとしても、それでアメリカの日本に対する嫌がらせが終わったとはいえない。
アメリカは、その何年も以前から日本に理不尽な嫌がらせをし、それに対して日本は忍従に忍従を重ねていた。
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20世紀前半、日本を虐めまくった米国
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実際には有り得ないことだったが、仮に日本がアメリカなどに石油を輸出してもらうために支那大陸(満州や支那)から撤退すれば、日本は失業者で溢れ大量の餓死者を発生させた。
このことは、後年マッカーサーも証言した。
念のために言っておくが、当時、支那や満州からの「撤退」といえば、日本軍・日本企業・日本人居留民など全ての撤退を意味した。
当時の支那大陸では、日本軍なしでは日本企業も日本人も生存不可能だった。
しかも、支那大陸から撤退すれば日本は4等国に転落し、その後日本列島でも生存できなくなる可能性があった。
当時は国家生存の条件とされていた大国の地位を失い、小国に転落すれば、いつソ連の一部や米国の植民地にされてもおかしくなかったし、ましてやアジア諸国の独立なんて何十年、何百年後に実現したか分からない。
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英国に植民地にされたアイルランドの人口は、1841年の820万人が1911年には444万人と約半分になった。
1939年9月に始まったドイツとポーランドの戦争ではポーランドの人口の0.4%にあたる約13万人が死んだが、1941年にドイツとソ連の戦争がポーランドで繰り広げられたら、ポーランドでは人口の20%が死んでしまった。
つまり、1939年~1941年のポーランドでは、戦争で死んだのは人口の0.4%だったが、戦争もせずに無抵抗な状況で死んだのは人口の20%だった。
アイルランドやポーランドの例でも分かるように、小国に転落することは戦争をするよりも多くの犠牲者を出す可能性がある。
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米国の対日嫌がらせの歴史と日本人が生きるための開戦
アイルランドとポーランドは戦争するより犠牲者数が多かった
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したがって、日本が支那大陸から撤退をするという選択肢は現実には有り得ないことだった。
実際には1941年に米国が日本に対して「石油なし」か「支那大陸からの撤退」かと迫ったことは、長年にわたる米国の嫌がらせに対する日本の忍従の限界点だった。
「石油なし」、「支那大陸からの撤退」、「石油と支那大陸の権益を確保するための戦争」の3つしか選択肢が残されない状況になった場合、最善策は「戦争」だった。
最後に、吉原政一が、徳富蘇峰に対して、「貴方には責任がないというのですか?!」と怒りつけるシーンがあった。
日本には東條英機(政府)にも徳富蘇峰(マスコミや大衆)にも誰にも責任はなく、責任は米国など連合国側にあった。
そして、戦争を起こしたのは日本ではなく、ソ連や支那や米国や英国やオランダだった。
東条英機の遺言
―――――
開戦の時のことを思い起こすと実に断腸の思いがある。今回の処刑は個人的には慰められるところがあるけれども、国内的の自分の責任は、死をもって償えるものではない。しかし国際的な犯罪としては、どこまでも無罪を主張する。力の前に屈した。自分としては、国内的な責任を負うて、満足して刑場に行く。ただ同僚に責任を及ぼしたこと、下級者にまで刑の及びたることは、実に残念である。
天皇陛下および国民に対しては、深くおわびする。
天皇陛下の御地位および陛下の御存在は、動かすべからざるものである。天皇陛下の形式については、あえて言わぬ。存在そのものが必要なのである。それにつきかれこれ言葉をさしはさむ者があるが、これらは空気や地面のありがたさを知らねと同様のものである。
東亜の諸民族は、今回のことを忘れて将来相協力すべきものである。東亜民族もまた他の民族と同様の権利をもつべきであって、その有色人種たることをむしろ誇りとすべきである。インドの判事には、尊敬の念を禁じ得ない。これをもって東亜民族の誇りと感じた。
現在の日本を事実上統治する米国人に一言するが、どうか日本の米国に対する心持ちを離れしめざるように願いたい。
また、日本人が赤化しないように頼む。
米国の指導者は、大きな失敗を犯した。日本という赤化の防壁を破壊し去ったことである。いまや満州は赤化の根拠地である。朝鮮を二分したことは東亜の禍根である。米英はこれを救済する責任を負っている。
日本は米国の指導にもとづき武力を全面的に放棄した。それは一応は賢明であるというべきである。しかし、世界が全面的に武装を排除していないのに、一方的に武装をやめることは、泥棒がまだいるのに警察をやめるようなものである。
戦死傷者、抑留者、戦災者の霊は、遺族の申し出があらば、これを靖国神社に合祀せられたし。出征地にある戦死者の墓には、保護を与えられたし。従って遺族の申し出あらば、これを内地に返還せられたし。
―――――
以上が昭和23年12月22日夜、死刑執行(12月23日零時)数時間前に、東京巣鴨において、教誨師の花山信勝師の前で東条英機が朗読した遺言の摘要である。
『秘録 東京裁判』清瀬一郎著(中央公論新社)より抜粋
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