上
イージス艦「ちょうかい」から発射された海上配備型迎撃ミサイル(SM3)
中
航空自衛隊のPAC3初試写
下
支那人民解放軍ミサイル部隊の演習
日本のミサイル防衛
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090125-00000522-san-pol
座して“テポドン”を待つのか? 日本のミサイル防衛
1月25日18時21分配信 産経新聞
北朝鮮のノドンやテポドンなどの弾道ミサイルを迎え撃つミサイル防衛(MD)が大きな節目を迎えようとしている。自衛隊が新型地上レーダーなどの運用を始め、すでに配備中の迎撃ミサイルと合わせ、年内にもひととおりのMDシステムがそろうためだ。ただ、自衛隊内にさえ「本当に当たるのか?」と命中率を疑問視する声があり、「金食い虫」との批判もつきまとう。日米の連携強化に向けた集団的自衛権の解釈見直しという法的課題はたなざらしのままだ。
■まさかの発射試験失敗
「えっ、失敗だと!?」
昨年11月、米ハワイ沖でミサイル発射試験に臨んでいた海上自衛隊のイージス艦「ちょうかい」からの一報に、東京・市谷の防衛省では衝撃が走った。
試験は最終段階まで順調だった。標的の模擬ミサイルが打ち上げられると、沖合いを航行中のちょうかいのレーダーは標的を探知、追尾した。約3分後、前甲板から海上配備型迎撃ミサイル(SM3)を標的に向かって発射。ところが、直撃予定の数秒前、SM3は標的を見失い、命中しなかった。原因は弾頭に不具合があったとみられる。
海自によるSM3発射試験は2度目だった。一昨年12月にはイージス艦「こんごう」が初の試験に成功している。ただ、このときは事前に標的の発射時間を知らせていた。今回は、より実戦に近づけるため、その時間を知らせておらず、難易度は高かった。
増田好平事務次官は「(MDの)技術的信頼性は高く、システム整備のスケジュールなどに影響を与えることはない」と表向き、平静を装った。自衛隊幹部も「米軍も何度も失敗を重ね、命中精度を高めてきている」と強調。実際、米軍は15回の試験のうち3回失敗している。
とはいえ、命中率に不安を抱かせ、正確な迎撃という運用面で課題を残したのは事実。「試験費用の約60億円が一瞬にして無駄になった」。MDに批判的な識者はそう強調した。
現行のシステム導入に1兆円、日米で共同開発を進める能力向上型の開発にはさらに数百億円。MDには多額の費用がかかる。厳しい財政事情のなか、試験の失敗が続けば、懐疑論が再燃しかねない…。防衛省内には、そんな懸念が渦巻いている。
■当たらなくても抑止力
弾道ミサイルは放物線のような軌道を描いて飛ぶ。ノドン(射程約1300キロ)やテポドン1号(同1500キロ)のように射程の長いものは、いったん大気圏外に出て、そこから再突入して攻撃目標に到達する。
これをMDでどう迎撃するか。対処は二段構えだ。まず、海自イージス艦のSM3が大気圏外で撃ち落とす。これに失敗すると、大気圏内まで落下してきた段階で、航空自衛隊が地上で運用する地対空誘導弾パトリオット(PAC3)で迎撃する。
政府は平成15年、米国が開発したMDシステムの導入を決定。海自はこんごう、ちょうかいのほか、22年度までに別のイージス艦2隻もSM3搭載型に改修し、MD艦を4隻態勢にする。
空自のPAC3の導入も進んでいる。一昨年3月の入間基地(埼玉県)への初配備を皮切りに、昨年3月には首都圏の4カ所に配備を完了。22年度までに、中京・京阪神地区と北部九州地区にも配備する。
SM3と同様、PAC3の試射も行われた。空自は昨年9月、米・ニューメキシコ州での初の発射試験で、模擬ミサイルの迎撃に成功している。
米軍は15年のイラク戦争で、イラク軍の弾道ミサイル3発をPAC3で迎撃しており、自衛隊幹部は「PAC3の命中精度は実戦で証明されている」と強気だ。
それでもなお、導入反対派はMDの命中率を声高に疑問視する。常套句が、「MDは拳銃の弾丸で弾丸を撃ち落とすようなものだ」。音速の10倍程度とされる超高速の弾道ミサイルに迎撃ミサイルを100%の確率で命中させるのは無理、というわけだ。
片や導入賛成派は、ほかに弾道ミサイルから国民を守る手段がないなか、「MD導入により、『拒否的抑止』を行使できる意義は大きい」(自衛隊幹部)と主張する。これは、日米両国の安全保障当局者の間で定着した考え方だ。
拒否的抑止とは何か。日本にはMDという防御能力があるため、「ミサイル攻撃を仕掛けても無駄」と敵国に認識させ、攻撃を思いとどまらせることを指す。仮に、迎撃ミサイルが100%当たる保証がなくても、MDを導入すること自体が抑止力になるわけだ。
たとえば、金正日総書記が日本に着弾するよう、ノドン発射を検討したとしよう。天秤にかけるのは、日本に与えることのできる損害と、日米両国からの反撃や国際社会からの非難だ。
そしてもうひとつ、MDで迎撃されるリスクも考慮しなければならない。そのとき、迎撃され、ダメージを与えることに失敗しても、国際社会から袋だたきにあうことや、反撃のリスクがあるのも同じとの結論に行き着く。であれば、「発射は止めよう」となる。
これが拒否的抑止の威力であり、説得力がある。
■日米の連携どう高める
(中略)
■座して自滅を待つべしとは…
SM3は半径数百キロの防護が可能で、日本海に2隻のイージス艦を配置すれば全国をカバーできる。PAC3の迎撃範囲は半径約20キロと狭く、政経中枢の首都圏や大都市圏の防護を念頭に置いた配備だ。
日米両国が共同開発を進めているSM3の能力向上型が実用化されれば、射程が延び、防護範囲は現行SM3の2倍以上に拡大。イージス艦1隻で日本全土をカバーできるようになるという。
一方、防衛省はPAC3の配備はこれ以上、拡大しない方針をとる。弾道ミサイルの標的になりやすいのは政経機能が集中するエリアであり、「全国に配備しようとしてもキリがない」(防衛省幹部)ためだ。
SM3が弾道ミサイルを撃ち漏らせば、「最後の砦」となるPAC3だが、地方には防護の傘が及ばないことになる。地方の住民は「同じ税金を払っているのに…」「見捨てられるのか」と腑に落ちないのではないか。
そうした批判を払拭するためには、弾道ミサイルへの対処能力強化に向け、さらなる措置が必要だ。その試金石となるのが、防衛政策の基本方針を定める「防衛計画の大綱(防衛大綱)」だ。
政府は今年末に防衛大綱を改定する方針で、今月9日には有識者による「安全保障と防衛力に関する懇談会」の初会合も開いた。18年に7発の弾道ミサイルを発射し、核実験も行った北朝鮮に対する抑止力強化も主要なテーマに掲げられる。
《座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだとは考えられない。他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能だ》
これは昭和31年の鳩山一郎内閣時の「敵地攻撃」に関する政府統一見解だ。ミサイル攻撃を受けた場合、敵基地をたたくこともできると明確に打ち出している。
しかし、この見解が出されて以降、敵地攻撃は政府内でタブー視されてきた。議論は進まず、50年以上経った今も、どの時点で敵地攻撃が可能と判断するか明確な基準もない。
能力面でも、現状の自衛隊装備では敵地攻撃は事実上不可能とされる。北朝鮮まで届くミサイルを保有しておらず、敵基地まで飛行していって帰還できる航続距離を備えた戦闘機も保有していないためで、米軍の打撃力に期待するしかないのが実情だ。
平成16年に現大綱を策定した際も、政府は敵地攻撃を可能にするミサイルの長射程誘導技術に関する研究着手を検討したものの、公明党の反対で取り下げた経緯がある。
「日本に着弾するミサイルの発射を北朝鮮に踏みとどまらせるうえで最大の抑止力は、自衛隊の敵地攻撃能力の保有だ」(自民党国防関係議員)。これも待ったなしの課題といえる。
―――――
MDは役に立たない。
MDで、北朝鮮や支那やロシアの弾道ミサイルを迎撃するのは絶望的だ。
実験用の攻撃側ミサイルは、北朝鮮や支那やロシアの弾道ミサイルよりも遅くて大きい。
しかも、実験では、その遅くて大きいミサイルが、いつ、どこに飛んでくるのか予め知らされている。
実験よりも速くて小さいミサイルが、いつ、どこに飛んで来るのか知らされないまま何十発も発射される実戦での迎撃は不可能だ。
MDが実戦で役に立たないことは、フィリップ・コイルやトーマス・クリスティなど国防総省の歴代の兵器運用・試験・評価局長なども明言しているのだから間違いない。
上の記事では、「拒否的抑止」などと主張する自衛隊幹部がMDを評価しているそうだが、意味不明だ。
自国に報復される恐れが無いMDでなく、報復される可能性がある日本の核武装こそが、敵の核攻撃を抑止するという単純な現実を認識するべき。
もう日本はMDは諦め、核武装に踏み切らなければならない。
詳細については、過去記事を参照して頂きたい。
●関連記事
『中国の「核」が世界を制す』伊藤貫著
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PAC3の移動展開訓練を延期
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ミサイル迎撃試験に大失敗
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